Life in Los Alamos

Daily Life in New Mexico


5月の物語,休日出勤

連休だと言うのに出勤である。取引先からシステムトラブルの連絡を受け,急遽会社へ駆けつける羽目になった。普段なら満員の電車に,座って通勤できるというのも皮肉なものである。

一足先に鈴木先輩が会社に到着していた。このシステムを担当する美人プロジェクトリーダである。

「本田君,ここんとこ,もう一度テストしてみて」

川崎サツキが担当した部分である。ちょっとそそっかしい新人の女の子である。鈴木先輩もサツキが作った部分が怪しいと睨んでいるようだ。プログラムをテストしながら,自分のキーボードを打つ音だけが響く静寂の会社の中で,さっきから気になっていたことを先輩に聞いてみた。

「あの,鈴木さん,どうして川崎本人を呼ばないんですか?」
「ああ,さつきちゃんね,連休を恋人とハワイで過ごすんですって」
「え〜,それで俺が呼ばれたわけ?」
「本田君,優秀だから,問題解決なんてすぐよね」

笑顔の素敵な鈴木先輩にそんなこと言われたら,川崎への怒りもファブリーズでさっと一吹きである。実際,休日の会社に男女二人っきりの状況である。もしかしたら何かが始まるんじゃないかと期待が膨らんできたのも事実である。

午後になり,なんとか作業終了が見えてきた。このまま順調に行けば夜までには終わるだろう。鈴木先輩の黒くて長い髪を横目でチラチラと見ながら,もしかしたら夕食を一緒になんてこともあるかなと,少しワクワクしてきた。

「本田君,なんとかなりそうね」
「ええ,この調子なら夜までには終わりますね」
「じゃあ悪いんだけど。。。」

鈴木先輩はおもむろに椅子から立ち上がると,

「さつきちゃんが空港で待ってるから,あとはよろしくね!」

そう言って,机の下からスーツケースを取り出し,会社を出ていった。