余命幾ばくも無いことを悟った殿様は,三人の息子を病の床へ呼び,一本の矢を彼らに持たせた。「その矢を折ってみよ」
三人の息子が難なく矢を折ったのを見届けた殿様は,「では,これを折って見よ」と三本の矢を束ねて手渡した。誰もそれを手折ることはできず,3人が結束することの大切さを教えた後,息を引き取った。遺言に従い,財産は長男と次男に分け与えられ,末の息子には城下から遠く離れた屋敷が与えられた。
しかしながら長兄と次兄は父の言わんとするところを理解できず,末弟に尋ねた。
「父は何を教えようとしていたのだ」
「矢は束ねた方が強いということでしょう」
長兄と次兄は家臣を呼び,命じた。
「一本の矢は弱くとも,三本束ねたるは強い。三本同時に射るべし」
やがて些細な口喧嘩から長兄と次兄は衝突し,互いに兵を挙げた。父の教えに従い,三本の矢を束ねて射るも,重すぎて敵陣に届かず,両軍の間に虚しく落ちた。
束ねた矢は瞬く間に底をつき,両軍大将は至急矢を調達してくるよう家臣に命じた。運良く,合戦のすぐそばで矢売りが店を開いていた。
矢は文字通り飛ぶように売れた。三本の矢を束ねては放ち,また矢売りの店へと駆けつけたが,遂にその金も底をつき,両軍引き分けたまま夕日が落ちた。
一文無しになった長兄と次兄は,援助を求めて弟の屋敷を訪ねた。屋敷はたいそう立派に改築され,その裏の工房では職人らがせっせと矢を作っていた。
