賢者からのクリスマスプレゼント

クリ子は夫へのクリスマスプレゼントを探しに冬の町へと出かけ,小さなアンティークショップの前で足を止めた。ショーウィンドウに飾られていたのは,凝った彫刻が施された古い懐中時計だった。以前スマ夫の祖父からそんな懐中時計の話を聞いたことがある。家にお金が無くて,泣く泣く手放したんだとか。迷わずその懐中時計を夫へのプレゼントに決めた。

家に戻ったクリ子はしばし美しい金の細工に見とれていたが,一つ気づいたことがあった。この懐中時計には鎖が付いていないのである。彼女は自分の宝石箱を開け,気に入っていた金のネックレスを壊し,それを懐中時計に取り付けてみた。少々不格好ではあるが,なんとか形になりそうである。

スマ夫は妻へのプレゼントにずっと悩んでいた。高価なものを買うほどの余裕はない。かと言って子供騙しな安物はそもそもプレゼントの意味が無い。気持ちが大事なんだ,値段では無いんだと頭の中では理解していても,やはりそこに込められた気持ちは値段と比例しているように見える。普段絶対に訪れることの無いデパートのアクセサリ売り場に並ぶ指輪やペンダントを眺め続け,ふと大きな花をあしらった髪飾りの前で足を止めた。

彼女がパーティの時に付けているネックレスに合いそうな豪華な髪飾り。これにしようか,でも財布が心許ない。それに彼女はいつもショートヘアスタイル,髪飾りを付けることなんてこの先ずっとありそうもない。スマ夫はしばし逡巡し,アクセサリ売り場を後にした。

クリスマスの晩,ささやかなディナーを終えた二人。クリ子は,
「はい,クリスマスプレゼント」
と綺麗にラッピングされた箱を渡した。中には金のアンティーク懐中時計が入っていた。まるで祖父が生前語っていたあの懐中時計のようだ。

「偶然見つけたの。きっとあなたのおじいちゃんがサンタさんにお願いしておいたのよ」
「へぇ,こんなのあったんだ。素敵だ!嬉しいよ。ありがとう」

スマ夫は懐中時計の鎖だけが何故か新しいのに気づいた。それは見慣れたあのネックレスであった。妻の心遣いで二人っきりのクリスマスパーティが優しく包まれるのを感じた。失われた懐中時計がまたこうして戻ってきた後に彼がすべきことは分かっていた。髪飾りである。

「僕からのプレゼントだよ」彼は妻に言った。「素敵な髪飾りが似あうように,育毛剤を買ってきてあげた」