初恋

ずっとずっと昔のこと。その女の子に初めて会ったのは病院でのことでした。彼女はずっと眠り続けていて,その安らかな寝顔が僕の心を少しだけ揺さぶりました。

僕も同じく病院のベッドに寝たままの日々。彼女が顔をこちらに向けて眠っているときは,ゆっくりと心の中に暖かいものが広がっていき,彼女が視野になければ,空気がカサカサと乾燥していくようです。

生まれて初めての体験でした。たまたま同じ病院に入院しているというだけで,名前も知らない女の子です。しかも彼女はずっと眠ったまま。小さな会話すらままならず,時間だけがゆっくりと過ぎていきました。

僕はまるで人形か絵画に恋したかのように,彼女の寝顔を見つめていました。彼女は何か重い病気なのか,彼女の祖父母や親戚が時折面会に来ていたようです。このままずっと一言も会話することもなく,彼女の名前すら知らないまま終わってしまう予感がしていました。いや,もし病院での別れになってしまうのなら,名前なんか知りたくなかったと思います。

でも数日の後,女の子の名前が分かったのです。彼女がじきに遠くへ行ってしまうと分かっているので,名前を知ってしまうと言うのは,それだけでちょっと辛いものです。

その日,女の子の両親がベッドに眠る彼女をやさしく見つめ,白く柔らかい布で彼女を包みました。彼女が抱き上げられて空っぽになったベッドには,彼女の名前が書かれたカード。その下には誕生日と出生時体重2800gと書かれていました。

僕は大声で泣いていました。別れが悲しいんじゃない。ちょっとお腹がすいたんだい。看護婦さんが大慌てでミルクを作ってくれました。