サンタのぼやき

「やっとられん」

そう言いながら,ロスアラモス分室駐在サンタクロースは勝手にキャビネットからブランデーを取り出し,どっかと暖炉横のソファーに腰を下ろした。

あ,それ大事に保存していたアルマニャック…一瞬引き攣った僕の顔を無視するかのように,貴重なブランデーの蓋をポンとあけ,豪快にグラスに注いだ。

「そろそろクリスマスの準備に忙しいんじゃないですか?」
「ああ,そうじゃな。無重力橇のメンテもせないかんし,ルドフルは最近メタボ気味じゃしな」
「おもちゃとかは用意しておかなくてもいいんですか?」
「準備だと?おもちゃは全部WalMartから出荷されるに決まっとる」
「えぇ!ディスカウントストアがおもちゃを提供してるの?」
「クリスマスったって,何時までも昔と同じわけない」

分室代表サンタはブランデーを飲み干し,からのグラスを再び高級アルマニャックで満たした。

「何か,変わってるの?」
「サンタの世界も,今じゃコンピュータ管理されておる。よーわからんが,なんか組合でドメイン名とかゆうのを取ったちゅーっとった。なんじゃったかな,さんた,どっとこむとか」
「へえー進んでるんだ」
「最近は,もらったプレゼントが気に入らないなどと抜かすガキが増えたから…」
「贅沢だね」
「好きなプレゼントをネットで予約できるようになった」
「Webサイトに行って,クリック一発ですね」
「ワンクリックはいかん!ツークリックじゃ。Amazon.comに提訴されるぞ」
「...なんか世知辛い世の中」
「それから最近,カスタマーサポートも始めて…」
「あ,その話はいいです。食傷気味だから」
「まぁサンタの話は最後まで聞くもんじゃ」
「はぁ...」

真っ赤な鼻のサンタは,ボトルに残っていたブランデーを全てグラスにあけた。一万円が消えた瞬間だった。

「破損したプレゼントは新品と交換してくれる」
「それは親切ですね」
「それだけでは無い。なんと千円プラスで,5年間保証も付ける」
「なんで,サンタが円建てなんですか」
「ガーッ!だまらっしゃい!VISA/Masterと提携しておる」
「おぉ,先進的!」
「今,Bank of Santaのクレジットカードを作れば,配達料無料サービス中じゃ」
「えぇっ!ほんとに!そんなことして,赤字にならない?」
「しかも,クレジットカードを作った方にもれなく,この世界でたった一個の金の鈴をプレゼント」
「うわー,それ欲しい!」
「おまけになんと!」
「なんと?」
「今なら特別限定サービス!!同じ金の鈴をもう一つ!」
「...おまえ,ほんとにサンタクロースか?」