連休に入り,新人研修がようやく一段落した。3月には新しく始まる日々に心躍らせていたのに,4月になると子供扱いされる日々。期待と現実の乖離に,次第に心が重くなってきていた。
「5月病」そんな言葉が頭をよぎる。自分が思っていたほど,俺にこの仕事は向いてなかったんじゃないか。もしかしたら転職した方がいいのか。でもまだ入ったばかりじゃないか。連休だと言うのに混乱し頭が破裂しそうだ。俺はふらりと外へ出た。
あてもなく歩き,古い商店街を通り抜けたところで,ふと看板に目が止まった。
民間のハローワークみたいなものか。思わず引き戸を開けると,老人が一人,事務机から物憂げそうな目を僕に投げかけてきた。
「仕事を紹介しているんですか?」
「まあな,50年ほどやっとる」
「今の仕事に行き詰まってるんですが。。。」
「5月になるとあんたのような若者も出てくるな」
「他にもいるんですね」
「そういう連中の仕事を交換しとるんじゃよ
俺はふと壁にかかったカレンダーを見た。5月である。
目を入り口の引き戸に転じると,憂鬱そうな顔をした若い男性が店内に入ってくるのが見えた。
「仕事を紹介しているんですか?」
俺は机に広げた新聞に落とした目をあげ,彼の姿を値踏みするようにゆっくりと眺めてから,言った。
「この仕事を始めて,もう50年ほどになるかな」
「今の職場に馴染めなくて。。。」
「仕事を交換してあげよう。俺はあんたを50年待ってたんだよ」